パンは酵母が発酵するときに生成する炭酸ガスを利用して生地を作ります。
酵母の発酵を利用して作る食品はパンの他にも、醤油 味噌 酒などたくさんありますが、イーストは製パンに適した酵母のことです。
今のように本格的なイーストが実用化されたのは19世紀以後で、パスツールが1861年に、酵母の研究を進め、それ以後、工業的に生産されるようになりました。
それまでは、ビール酵母を主に使ってパンを作っていたようです。
ポイント
ここでぜひとも確認しておきたいのは、工業生産されたイーストも、サッカロミセス・セレピシエ・ハンセンに属する微生物で元々自然界に存在する「生き物」です。
工業生産という意味は「最もパン製造に適した単一の酵母を純粋に培養して増殖を助ける、という作業」のことを言っているだけで、決して人口的に作り出したのではありません。
あくまで、イースト=酵母であることに違いはありません。
いな、天然酵母で作ったパンがクローズアップされ、これと対比してイーストを化学的に作り出した添加物のように勘違いされているお客さまが多いので、ここの部分だけは、必ず正確な説明ができるように認識しておかなければなりません。
天然酵母のパンはぶどう等の果実や穀物に付着している酵母や乳酸菌を利用して種を作り、それを使ってパンを作ったものです。
だからイーストのように単一種の酵母ではなく、いろいろな種類の酵母や微生物が混在していて、それぞれの酵母や乳酸菌の出す香気成分と、もともと付着していた果実や穀物のフレーバーがパンに独自の味と香を付けているのです。
つまり一口に天然酵母と言っても、作る場所、培養する種、利用する粉によって、全く違ったパンができます。
前述のようにイーストも天然由来の酵母ですから、いまマスコミで言われている天然酵母は、果実などに付着している酵母を自家製で培養した自家製パン種と言い換えたほうが、正しいかもしれません。
イースト
イーストは球状もしくは卵形で、一個の大きさは短径5~10※ 長径10~15※程度です。
(1※=千分の1mm)
酵素が充分にある環境では出芽によって盛んに増殖し、酵素が無くなるとアルコール発酵を始めて、炭酸ガスとアルコールを生成します。 パンに使われているイーストは生イーストとドライイーストの2つに分けられます。
生イーストは、66~70%を水分が占めており、通常、水に溶かして使用します。
また、無糖用や加糖用、冷蔵生地用や冷凍生地用と種類も豊富で、パンの種類や製法により、細かくイーストを使い分けできます。
ドライイーストには4~9%と10分の1の水分しかありません。
このために、通常、予備発酵が必要となります。
また、最近ではドライイーストの分類で予備発酵を無くし、直接粉に混ぜて使用できるようにしたインスタントドライイーストもかなり普及しています。
世界の天然酵母
ドイツ | ライサワー種 | ドイツのライ麦パンを作るときには欠かせない天然酵母です。 ライ麦を使用し、何日もかけて作られます。 ドイツでは一般には大きなタンクで培養して独自の種を作っていきます。 |
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イタリア | パネトーネ種 | イタリアの天然酵母で、通常のパン酵母とは異なるサッカロニセス・エキシューギスという酵母が主体になっています。 この酵母の培養はイタリアでも一部の地域しかできません。 パネトーネの独自の風味を醸し出しているのはこの種のお陰で パンドーロやコロンバにも欠かせない種です。 |
日 本 | 酒麹種 | 酒作りの酒種をヒントに作られた日本独自のパン種です。 酒の風味があり、甘い菓子パンには大変よく合います。 |
イギリス | ホップ種 | この種でパンを作るとホップの苦味がパンの風味を増してくれます。 またホップには抗菌作用があるので、パンにカビが付くのも防いでくれます |
中 国 | 老麺種 | 中国の蒸し饅頭に欠かせない独特の種です。 これを使うと、脂っこい餡と良くマッチするので大変美味しくソフトな蒸しパンができます。 |